Kバレエ タイムズ K-BALLET TIMES

K-BALLET認定校交流会レポート「知識をアップデートし、より良い教育を全国に―—」

2025.03.17
イベントレポート

3月某日、Kバレエ認定校の先生方がK-BALLET ACADEMY/SCHOOL校長の蔵の元にオンラインで集まり交流会を開催いたしました。

この会は、生徒への指導や集客の課題など、普段教室運営をしていくなかで感じていることなどを意見交換し、お互いに学び、より良い教室運営や教師としての更なる成長を目指すことを目的としています。また、昨今の教育を取り巻く環境においては、生徒とのコミュニケーションや向き合い方、変化していく指導法などに、悩みながら向き合うことも多く、そのような課題や問題意識をシェアし、解決法をアップデートすることは大変重要なことだと考えています。

この日の参加者は、北海道・札幌市 小林絹恵バレエスタジオの小林絹恵先生(元K-BALLET COMPANYソリスト)、高知県・高知市 CLAIR BALLET STUDIOの河合有里子先生(元K-BALLET COMPANY ソリスト)、神奈川県・横浜市 PETIT-PERFORMING-ARTSの伊坂文月先生(K-BALLET TOKYO ゲスト・アーティスト、元K-BALLET COMPANY バレエ・マスター / プリンシパル・ソリスト)。

Kバレエの舞台で活躍したという共通項があるみなさんは、先輩後輩の関係ですが、それぞれの活躍を知っているからかとてもリラックスした様子で、熱心に蔵校長のお話しを聞いてくださいました。熱心にメモをとる様子や、実際にご自分でも手足を動かしながらお話しを聞く様子に、現役時代から変わらないみなさんのバレエへの熱い想いを感じる2時間となりました。

プロになりたい子も趣味の子も“楽しい”バレエ

小林先生は15年前に札幌で教室を開校。YAGP NY本選で1位を受賞するなどとても優秀な生徒を輩出し続けていますが、それゆえに「趣味で楽しくバレエを習ってみたいと思う新規入会者に、敷居が高くて躊躇されること」が多いことを懸念としてお話しされていました。「もちろん、趣味が目的でも全く構わないですし、楽しくバレエを習ってほしいけれど、正しく指導はしたいし、厳しくすることもバレエの格を保つためには妥協できないことなので・・・」と小林先生。深く頷く蔵校長は「その悩みはKバレエがもつ悩みととても似ていると思います。Kバレエはアカデミー、スクール、テディズ バレエと目的に合わせて分けてはいますが、それでもスクールは対象の年齢幅が広いので、色々なレベルや目的の生徒さんがいらっしゃいます。私としては、“楽しい”には色々な楽しさがあると考えています。ただ楽にやることだけが楽しいのではない。例えば、できなかったことができるようになる“楽しさ”の方が大きいし、やみつきになる楽しさだと思っています。崇高な芸術であるバレエはそこが魅力ですから、決して敷居を下げる必要はないと思いますが、色々なレベルの生徒それぞれに、成功体験をさせてあげることは大事なのではないでしょうか。」そのために大事だと蔵校長が語るのは「クラスの時間をこれまでの常識にとらわれないこと」と「コミュニケーション」でした。

「例えば、レベルがさまざまな生徒がミックスされているクラスだと、それぞれにあった課題を入れ、説明をすると(日本ではスタンダードな)1時間半のレッスンでは足りないことがあると思います。その場合思い切ってレッスン時間を長くしてしまうのも良いと思いますよ。いまは海外だと1時間45分がスタンダードで、2時間のクラスという学校も珍しくありません。」

また「蔵校長のクラスは会話がとても多いですよね?」と聞かれると、「今の動きは何を気を付けるの?この動きは何のためにやっているの?ということをクラス中に頻繁に会話するようにしています。なんとなくやっているのと、理解して行うのは密度が全く異なりますから。その時に“身体ではまだできなくても頭では理解している”という生徒もいるんです。私はそういう子は時に “できている”として扱います。(ある技術が)できるかできないかだけで判断して、“この子はできてる” “この子はできない” としたら劣等感が生まれてしまうし、それこそ“楽しくない”ですからね。今やっていることを“正しく理解できている”ことは、“良くできました”の対象なんです。」

1人でも多くの子供たちにバレエに出会ってもらうために

少子化が進む現代において、新たにバレエを習う方を増やすためにどのような工夫をしているかも話題に。伊坂先生と河合先生は3年前に教室を開校、それぞれスクールがある環境に丁寧に寄り添って教室運営をされていることが印象的でした。

伊坂先生は宝塚出身の奥様とスクールを運営。バレエだけでなく多彩なダンスのクラスも開講していることが特徴です。「近くに小学校があるので、学校などに出向きバレエを見せる機会を積極的に作っています。またスタジオではヒップホップなども教えているので、そちらの生徒がたまたま別のスタジオでやっているバレエをみて興味を持ってくれたりということもありますね。」

河合先生も3年前にお教室を開校しましたが、土地柄教室を移動してくる子は少ないので、初めてバレエを習う未就学児のクラスを丁寧に展開しているそうです。「すでにバレエを習っている子が転校してくるということはあまりないので、初めてバレエを習う子のクラスは特に細かいクラス展開をしています。例えば地方だと未就学児は1クラスということも多いかと思うのですが、うちは2〜3歳で1クラス、4歳〜6歳で1クラスなので、より効率的に指導できていると思います。」

Kバレエスクールの事務局からは、ここ数年で行ったPR事例なども紹介させていただきました。特に大人の方々対象の「生まれて初めてバレエ(バレエ45)クラス」については伊坂先生から「はじめての前の初めてクラスいいですね!」という声が。

Kumakawaメソッドの具体をご紹介

また先生方が特に熱心に聞いていたのは「Kumakawaメソッド」について。Kumakawaメソッドは、熊川哲也の踊りを蔵健太が徹底分析し、「アジア人が最も早く効率的に上手くなり、美しく踊れる」メソッド。 蔵校長が一例として紹介したのはポール・ド・ブラ 1番ポジションの両手中指の間の距離について。「横からみた時に、頭から背中までのラインが割合フラットで、肘から中指までが長いといわれる骨格のロシア人を念頭においたワガノワメソッドの場合は両手中指の間の距離は紙1枚分開けると言われています。首のラインが少し前にでていて、肘から中指までのラインが長くないと言われる英国(ヨーロッパ)の人を念頭においたロイヤル・メソッドの場合は、両手中指の間の距離は頬骨の間隔に合わせるとされています。そして、肩が鎖骨より前についていて、いわゆるなで肩が多いアジア人の場合は、ワガノワのメソッドでやると手がオーバークロスしがちです。英国式でも動きによってはややしっくりこない。そこで熊川ディレクターとも相談して、アジア人にとって最適な間隔を見つけました。最適な間隔をとることでバランスがとりやすくなり、回転もしやすくなるんです。」と蔵校長が説明し、見本をカメラで映しながら説明すると、先生方は熱心にメモをとっていました。

また、前にタンデュを出す位置についても、どこを中心として出すかを変えることで、ロシア人的骨格の人が、英国人的骨格の人が、アジア人的骨格の人が、それぞれアンデオールをより使いやすくなるのだということを話すと、伊坂先生は思わず立ち上がって実践していました!

小林先生は「いま私の生徒にとても頑張っている男子生徒がいるのですが、男子を教えることは簡単ではないです。Kumakawaメソッドはディレクター由来ですから男性テクニックにこそ生きるのだろうなと思うので、ぜひメソッドを教えて欲しいです」と熱い要望が。「札幌まで教えにいきます!」と蔵校長。

国内外から引っ張りだこの蔵校長ですが、3人の先生方の熱い想いに「ますますメソッドを皆に知っていただき、みんなが上手になるお手伝いができれば」という思いを強くしたそうです。

これからもK-BALLETでは、全国でバレエ教育に真剣に向き合う認定校のみなさんと意見交換をし知識を深め、より充実したバレエ教育を全国でお届けするお手伝いをしていきたいと思います。

小林絹恵先生が主宰する小林絹恵バレエスタジオ。
生徒の身体作りや怪我防止のために力を入れているスタジオ専属トレーナーのエクササイズクラスなども設けてクラスを展開し、コンクールの上位入賞者なども数多く輩出している。

小林絹恵バレエスタジオ
代表 小林 絹恵
〒003-0024
北海道札幌市白石区本郷通12丁目南4-17 
TEL 080-3239-4414
WEB https://kinu-ballet.jp/

河合 有里子先生と三浦 響基先生が主宰するCLAIR BALLET STUDIO。子どもから大人まで 正しく楽しくクラシックバレエ が学べるバレエスタジオを高知市で開催しています。

 CLAIR BALLET STUDIO
代表 河合 有里子/三浦 響基
〒780-0066
高知県高知市比島町2-3-41
TEL 090-5716-9093
WEB https://clairballet.studio.site

伊坂文月先生が主宰するプティパフォーミングアーツ。ダンサー時代から変わらない情熱を次世代に継承すべく、「夢に生き、夢が生まれ、夢が花開く場所」をコンセプトに多彩なクラスを展開している。

PETIT-PERFORMING-ARTS
代表 伊坂 文月
〒223-0051
神奈川県横浜市港北区箕輪町2-9-6 石井工務店2F
TEL 045-534-5126
WEB https://www.petit-performing-arts.com