Kバレエ タイムズ K-BALLET TIMES

【校長コラム】Vol.5 上達し続ける人たちに共通する心掛け、その3つの特長 - 蔵健太(K-BALLET ACADEMY/K-BALLET SCHOOL校長)

2024.11.23
校長コラム

Kバレエ アカデミーの新シーズンが9月から始まり、毎日充実した日々を過ごしています。

生徒たちの毎日のレッスンに対するエネルギー、プロのダンサーになりたいというコミットメントとモチベーションも非常に高く、昨年のアカデミー開校時と比べると技術レベルも飛躍的に向上しています。10月にはユース・グランプリ(YGP)日本予選が行われましたが、アカデミーからは4名が出場。皆が決勝進出し、全員が海外スカラーシップ賞を受賞するなど、生徒たちがグローバルレベルで高い評価を受けたことは大変嬉しく、アカデミーの1年の成果として、少し安したことも確かです。

また、私自身も昨年からYGPには審査員として関わらせていただいており、日本だけに留まらず、9月にはYGPフィリピンでも審査員をさせていただきました。バレエが急発展しているアジア諸国の勢いは凄まじく、たくさんの学びを得ることができました。

YGP日本予選。シニア男性部門第1位受賞とシニア女性部門でTOP12が2名という結果を出すことができました。
YGP日本予選。シニア男性部門第1位受賞とシニア女性部門でTOP12が2名という結果を出すことができました。

YGPのような場所では、日本でも海外でも多くの子供たちから、「どうしたらバレエが上手になるのか」という問を受けることがあります。私はそんな時、上達をする人たちの特徴を3つ話しています。

1つ目は、「たくさん練習をする(たくさんの良い癖を作る)、2つ目は「自分の姿を常に確認する(審美眼を養う)」3つ目は「仲間を作る(仲間と練習する)」です。

上手になるにはたくさんの練習時間を要しますが、必ずしも「たくさん練習すると上手になる」ということではなく、「たくさん練習するとたくさん癖がつく」というほうが、ダンサーに当てはまると私は考えています。例えば自習は反復練習を繰り返すことで、そのような"癖” をつけるには打ってつけですが、悪い癖がつく危険性もあります。癖はあくまで"良い癖”でなければいけないのですが、では、くさんの良い癖をつけるにはどうしたらいいか。そのために重要なのが2つ目の「自分の姿を常に確認(審美眼を養う)」ことになります。これはわかってはいるが重要視していない人が多いと感じるポイントです。

まず、バレエを踊っている最中は、自分の姿は見えていないので、自分が想像している姿と実際の姿は違っている場合が多いことを認識すべきです。正しいフォームから外れていることを認識できず、自分がやりやすい間違ったフォームで技術を自習で身につけてしまうと、結局その後に修正作業に追われ、いわゆる無駄な練習になってしまうのです。私が知っている世界のプロダンサーの多くの方々が、練習の際には自分の姿を録画し、練習後に必ず自分の姿を視覚化し、自分の頭の中で思い描いていたイメージと、練習の際の自分の姿が一致しているのか確認しているのは、思っているほど、自分で自分の踊りはわからないということを知っているからだと思います。

審美眼を育てるには、審美眼を持っているコーチから学ばなくてはいけません。コーチの審美眼とダンサーの能力は比例するのです。レベルの高いダンサーには必ず素晴らしいコーチが存在しているのは皆さんもご存じだと思います。審美眼を持つコーチが、未来の自分のイメージを的確に与えてくれ、将来的にはコーチの手を借りずとも自らの審美眼で、自分が自分の一番の教師になれるのが理想です。

Kバレエ アカデミーでも個人練習はありますが、練習の意図を理解して、練習メニューを決め、そしてその練習が正しく行われているのか練習後に確認することの大切さを話しています。

フィリピンの生徒たちと。バレエ人口が増え、レベルが 急成長しており、学ぶ意欲にあふれていました。
フィリピンの生徒たちと。バレエ人口が増え、レベルが急成長しており、学ぶ意欲にあふれていました。

3つ目に挙げたことは、「仲間を作ること」ですが、なぜなら上達し続ける人は練習仲間が多いと思うからです。仲間がいるということはまずメンタル面でのメリットがあります。上達するということは、できないことに挑むことですから、思いどおりにならないことの繰り返しです。気分落ち込みがちななか、同じ目標を持って練習する仲間の存在はモチベーションに欠かせません。「早く進みたければひとりで進め。遠くまで進みたければ、みんなで進め」という言葉は私のモットーの一つです。

応用技術を向上させたい時に、悩むことは普通のことですが、どうしたら良いか一生懸命調べたり、試したり、誰かに教えを請うたり、諦めずに追求すると上達する可能性が広がるのです。私が英国ロイヤル・バレエ学校の生徒の時に、当時ロイヤル・バレエのプリンシパルだった熊川哲也ディレクターは、ひとりで練習している私の姿をたまたま見かけ、「早く上手になりたいなら、必ず誰かに見てもらい練習をしたほうが良い」「ただ闇雲に練習しても、悪い癖ばかりついて、後で修正するのが大変になる」「自分個人の練習だけで培った感覚が常に正しいとは限らない」というアドバイスをいただき、はっとしたものでした。

ただ、コーチや友達といった第三者と練習するということは、意見の相違に向き合うことにもなるでしょう。ここまでの意見もあくまで私の意見ですし、他の指導者はまた違う意見を持っていることもあるでしょう。納得できることもそうでないこともあるかもしれない。しかしそれこそが大事なのです。自分とは違うアプローチや考え方に触れることで、自分の個性やスタイルが築かれるのですから。

YGPの審査員たちと。世界の名門学校の先生方とは最新の教育法について意見を交わす機会も多くあります。
YGPの審査員たちと。世界の名門学校の先生方とは最新の教育法について意見を交わす機会も多くあります。