Kバレエ アカデミーが開校し、初めての1年が経ちました。
数多くのパフォーマンス・イベントで生徒たちが努力した結果が形となって現れる瞬間に携わることができました。YAGPコンクールでのNYファイナル出場、国内コンクールでの優勝や入賞などの評価もいただき、多くの方々に高く評価される成果を残せたアカデミー生たちをとても誇りに思います。

今年9月からは、2名の生徒がそれぞれ英国ロイヤル・バレエ学校への年間留学とオランダ国立バレエアカデミーへ年間フルスカラーシップ留学をします。
2024年度の卒業生は全5名で、1名はKバレエ トウキョウに入団が決定しました。また他の4名は9月から新設されるKバレエ・プレ・プロフェッショナル・コースに進み、プロフェッショナル・ダンサーへの第一歩を踏み出します。
私や教師、そして生徒や保護者の皆様にとっても初めて尽くしで、怒涛のように過ぎた1年の最後は、“パフォーマンス・セレブレーション”で締めくくりました。この1年間で行ったすべてのパフォーマンスを抜粋した2時間半のパフォーマンスを保護者の前で披露したほか、卒業や留学をする生徒からのスピーチや我々教師からのスピーチも交えて笑顔と涙のセレモニーとなりました。1年間生徒たちを暖かく見守り、惜しまぬ協力をしてくださった保護者の皆様からの暖かい拍手に包まれました。保護者の方から我々教師陣にも、多くの心温まるお声をいただきましたが、なかでも、あるお母様が「息子が私に感謝の言葉を言うようになり、最初はおかしくなったのかと思った(笑)」と嬉しそうに語ってくださったのが印象的でした。日頃から生徒には、ご家族に感謝を表現することを口酸っぱく伝えている私としては、このようなエピソードは、技術の向上以上に嬉しいものです。もちろんバレエの面でも、ご自分のお子様が圧倒的に成長した姿に驚かれた方も多かったようです。
私はダンサーが成長するには、まずバレエを「楽しむこと」から始まり、次に「身体を動かし努力する楽しさ」を覚え、最終的には「知識を身につけ、自ら考え工夫すること」ができる創造力と自発能力が必要だと考えています。
想像力と自発能力を育てるために必要なのは、好奇心や審美眼を育てることが重要だと考えていますが、審美眼とはどのように育むことができるでしょうか?
美しいものに触れること、例えば美術館に行く、舞台を鑑賞するのはもちろん、自然の香りに触れ全身の感性を高めることも必要でしょう。そして「知識や情報を収集する」ことも大事です。自分が知らないことに触れることは発見であり、学びです。何かを調べ「わかった!」という経験は、次の「もっと知りたい!」に繋がると思います。それは時に最先端の情報を知ることでもあり、過去の歴史を知ることにもなります。ただバレエは身体で表現する芸術ですから、知識だけで頭でっかちになってもいけませんし、知識だけでは感受性が育ちませんから、得た知識を実践して体験に繋げるように生徒たちには伝えています。
そして最後に、「言語化する」ことがとても大事だと思います。これはあまり日本的ではないのかもしれませんが、バレエは外へ表現する芸術ですので、「何が見えているのか」「なぜ美しいのか」「どのように動けばいいのか」など、自分の好きなことを「What」「Why」「How」を常に言語化することをお勧めします。例えば自分が感性で「好き」だと思うことを、後付けでよいので、それはなぜなのか論理的に考え分析することで、より納得して、自分をさらに肯定できると思うのです。
例えば審美眼に必要な「美しさ」というものも、極めて複合的なものです。一面だけでは説明できません。複数のレイヤーによって形作られています。「見て」「聞いて」「触って」などの感覚と「What」「Why」「How」を言語化する論理の両輪を用いることで「美しさ」を正確に掴みとりやすくなるでしょう。
まずは頭や身体にインプットし、楽しみながらアウトプットさせていく、その過程が審美眼を育て、あらゆる世界を美しく見る眼が養われていくと私は考えます。
9月にスタートしたばかりの今シーズンも、アカデミー生にも私にもさまざまなチャレンジが待っています。マリインスキー・バレエで長らく芸術監督を務めたユーリ・ファテーエフ先生の講習会、YAGPのコンクールなど秋だけでも多くの機会が目白押しですが、好奇心と審美眼をもって見る世界からは、より多くのことが学べるはずです。
我々教師陣も、日々好奇心を忘れずに、審美眼を磨き続けながら、生徒に向き合いたいと思っています。

