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【校長コラム】Vol.1 数々の国際交流も実現したアカデミー開校からの2カ月 - 蔵健太(K-BALLET ACADEMY/K-BALLET SCHOOL校長)

2023.11.25
校長コラム

9月1日にK-BALLET ACADEMYが開校し、2カ月が経ちました。初日には開校式を行い生徒と保護者の方々にアカデミーの教育システムを理解していただくための説明会を開きました。その後も生徒・保護者との三者面談を行うなど、早速クラス以外においても多くのことを実践しています。

この2カ月の間には、すでに多くの国際交流も実現しました。9月には、フィリピンバレエ協会から20名の方々がアカデミーの視察にいらっしゃいました。クラスを学されたほか、意見交換会では、同じアジアとして共通の悩みや国ごとに異なる課題などで白熱の議論を行うことができました。

アカデミーを視察に訪れたフィリピンバレエ協会の方々と
アカデミーを視察に訪れたフィリピンバレエ協会の方々と

10月には小石川植物祭でパフォーマンスを開催し、アカデミー生は早くもお客様に踊りを見ていただく機会に恵まれるなど、多くの出来事がありましたが、なかでも特筆すべきは、Youth Grand Prix Japan(YGP)においてアカデミーが日本初のパートナーシップに選ばれたことです。YGPは、YAGPとしてもその名を知られる世界最大のスカラーシップ提供コンクールです。9歳から19歳までを対象に、現在アメリカ国内30カ所のほか、イタリア、フランス、スペイン、アルゼンチン、ブラジル、韓国、中国、フィリピンなどで開催されており、24年間で20万人以上が参加しているバレエ関係者で知らない人はいない国際コンクールです。

小石川植物祭にて開催したパフォーマンス
小石川植物祭にて開催したパフォーマンス

10月15日から開催された25回目の日本大会には過去最多の1300人の参加者が国内外から集まりました。私も審査員のオファーを受け、約1週間の間、全3部門の審査を担当したほか、5クラスの指導を担当し、熊川ディレクターと構築中の“Kumakawaメソッド”の素晴らしさを伝えさせていただきました。​​審査員は、私以外は全員海外のバエ学校から来た16名の方々。モナコ・プリンセス・グレース・アカデミーやジョン・クランコ・バレエ・スクールの校長など、世界中の先生と現代のバレエ教育についてたくさんの意見交換ができたことも、大きな収穫でした。

YGP開催期間中は、毎日朝早くから夜遅くまで劇場で時間を過ごし、審査席からはもちろん、舞台袖からも生徒や先生方の様子を拝見し、多くのことを感じ、考えました。これは、一教師として私が生徒によく話していることですが、ダンサーは、アーティストとして土台を作る10代からプロとして成熟する20代、ダンサーとしての道を極める30代から40代への時間の過ごし方でその後のキャリアが大きく変わっていきます。

YGP日本大会にてクラスを指導する蔵健太
YGP日本大会にてクラスを指導する蔵健太

今回多くの子供たちに接し、「常に好奇心と高みを目指す探究心を持ち、新しいことにチャレンジする姿勢を持ち続けなければいけない」ということを改めて感じました。舞台上での成功を強く望む時には、長い間の努力と挑戦が必要ですが、挑戦には失敗はつきものです。「挑戦からの失敗、失敗からの反省、反省からの成功」は自身を成長するために欠かせないプロセスだということを頭に置いてほしいと、生徒たちには常に言い続けています。失敗することのない人間というのは、新しいことに挑戦をしたことがない人間です。第一線で活躍するダンサーは、多くの失敗を乗り越えながら、常にチャレンジを続けています。

バレエを続けていて苦しいことはたくさんあります。辛いのは今頑張っているから。悩み、迷うのは、進もうとしているからです。苦手意識があるということは大事なことなのです。苦手なことがあるからこそ、意識的な努力を積み重ねことができると私は考えるのです。プロのダンサーは常に自分と向き合い、鏡や映像などで自分の姿を確認し、指導者のアドバイスを大切にしています。自分自身を客観的に見つめ欠点を知り、修正していくことで自らを作り上げていきます。生まれ持った才能の差というものは実はとても小さく、積み重ねた努力の差がいつしか才能を大きく上回ると私は信じています。

最後にバレエの道を極めたい方へ私からのアドバイスを一つ。ダンサーとしてバレエだけではなく、ぜひ芸術そのものを学んでください。歴史を把握して初めて、新しい表現を追求することができる。何も知らずに舞台に上がるのはアートではなく、ただの自己主張です。若い時は感性と身体能力に頼りがちですが、感性だけを頼りにするのではなく、教養を身につけ、プロセスの中で確立していく。そういったクリエイティブな行為が皆さんのこれからのバレエ人生を高めていくのです。

先月はYGPの審査員を務めたロイヤル・バレエ・スクール教頭のホセ・カラヨル先生、ヨーロピアン・スクール・オブ・バレエ(ESB)のクリスティーナ・サソー先生、欧米で躍進する振付家ゴヨ・モンテロ氏のアシスタントであるマカレナ・ゴンザレス先生がアカデミーで指導してくれました。生徒たちの情熱にお褒めの言葉をいただき、ロイヤル・バレエ・スクールのサマースクールスカラーシップ、ESBのサマースクールへの入学許可や短期留学許可をいただくことができました。海外研修は芸術や歴史を学ぶ機会としても絶好の機会です。私たちスタッフも常に挑戦する気持ちを忘れず、新たな経験のサポートをしていきたいと思っております。

海外より講師を招いての講習会
海外より講師を招いての講習会