Kバレエ スクールの大人プログラムが年に一度開催する発表会「Chance to Dance(チャンス・トゥ・ダンス)」。今年は10月18日(日)、彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて開催されます。
5スタジオから各約30名が参加するほか、新たにメンズバレエクラスも加わり、ますます充実した舞台となることが期待される今年の公演。今回は、後楽園校の振付・演出を担当する浅川紫織さんにお話を伺うとともに、本番を約2カ月後に控え、舞台に向けて練習に励む大人ダンサーたちのリハーサルの様子をレポート。
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この日、参加した大人ダンサーは29名。後楽園校の演目は、『ラ・バヤデール』第1幕「宮殿の庭」より抜粋。リハーサルが始まると、まずは全員で踊るコーダの総仕上げに取り組んだ。演出・振付を担当するKバレエ トウキョウ副芸術監督・浅川紫織を中心に、同バレエ・ミストレスの山田 蘭、Kバレエ スクール教師の八木りさがアシストし、自ら踊ってみせながら、ピアノの生演奏に合わせて細かな動きまで丁寧に指導していく。

浅川の明るい叱咤激励に、参加者たちは真剣に耳を傾けながらも時折笑顔を見せる。休憩を挟みながら気になる箇所は何度も繰り返し、全員で一つの作品を作り上げていく。
この日は、ゲストのKバレエ トウキョウ ソリスト・梅木那央を交えてのリハーサルも。梅木の踊りに感嘆の声が上がる場面もあった。その後のバリエーションの練習では、待ち時間にも自主練習や仲間同士で動きの確認に励む姿が。限られた時間を惜しみなく使い、本番に向けて踊りを磨く姿に、舞台での一体感への期待が高まった。

「Chance to Dance(以下CTD)」では、演目や教師が事前に発表され、参加したいスタジオを自由に選択。約半年間(計50時間)、毎週リハーサルを重ね、演目を完成させていく。ゲストとしてKバレエ トウキョウの現役ダンサーが参加し、衣裳は、一人ひとりの身体に合わせた、この公演だけのために製作される特注品だ。
「誰かに教えてもらい、学び、そして半年間、同じ目標を持つ仲間たちとともに一つのことを成し遂げていく経験は、大人になるとなかなか得られないもの。年齢、性別を問わず、誰でも自らの意思で参加できるのも『CTD』ならではの魅力だと思います。はじめましての人と知り合い、交流が広がったり、今まで以上にバレエが好きになったり。公演だけで完結せず、その後のバレエ生活にもいい影響が続いていくことが、この企画の素晴らしさだと感じています。普段のレッスンとは違い、公演では役を演じ、Kバレエ トウキョウの現役ダンサー、指導者、カンパニーの公演を支える舞台スタッフが携わるので、プロのバレエ公演の世界を体感できる魅力もあると思います」(浅川)
後楽園校が披露する『ラ・バヤデール』第1幕「宮殿の庭」より抜粋は、ソロルとガムザッティの盛大な婚約式が描かれるシーンだ。浅川は、踊っていて気分が高揚するような華やかな演目を意識して選んだそう。振付は、Kバレエ トウキョウの同演目がベースとなっている。
「『ラ・バヤデール』は古典バレエの代表作で、華やかさがあり、大人の方々の雰囲気にも合う演目。今回は『壺の踊り』などKバレエ版にはない踊りもあり、1人につき約5曲を踊るなど、盛りだくさんの内容になっています。それだけ多くの踊りに挑戦すること自体が、今回の見どころだと思います」(浅川)

本番2カ月前の今は、振付を終え、細かな部分を詰めていく時期。ゲストを迎えてのリハーサルも始まり、衣裳も完成するなど、本番に向けて意識が一段と高まっていく。カンパニーで現役ダンサーの指導にあたる浅川から、舞台での見え方まで直接学べるのは貴重な経験だが、浅川自身も参加者たちから刺激を受けているという。
「『CTD』で実際に作品を踊ることで、普段のレッスンでなぜこういうステップを練習するのかなど、バレエへの理解がより深まると思います。普段のレッスンが自分と向き合い、技術を高めていくものだとしたら、『CTD』は同じメンバーで一つの舞台を作り上げていくもの。半年間、同じ作品に向かっていく一体感を大切にしながら、誰一人取り残さないよう指導しています。皆さん本当に自分に厳しく、本番に向けてどんどん深め、追求していくんです。そうした姿を見ていると、私自身も『もっと追求しなければ』と思いますし、ポジティブな刺激をもらっています」(浅川)
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今回は初めてメンズバレエクラスから男性16名が「CTD」に参加。Kバレエ トウキョウ総監督・熊川哲也がこのメンバーのために新たに振り付ける作品を披露する。
「指導は熊川ディレクターのほか、私とKバレエ トウキョウ プリンシパルの石橋奨也さんが担当し、20代から60代までさまざまな職業の方々が参加されています。体育会系の部活のような雰囲気で、助け合いながら高め合っているのが印象的です」(浅川)
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初めてのことに挑戦する時は、誰だって勇気がいるもの。だからこそ乗り越えた時には新しい一歩を踏み出せているはず。
「私自身も、それまで知らなかった作品を踊ることで、『こんな世界があったんだ』と感じたり、その作品を知ることで新たに見えてくるバレエの一面があったりします。参加する皆さんには、公演を通してそういった経験をしてもらえたら嬉しいです。今年は、総勢約170名が参加しますが、本番は、半年間頑張ってきた自分に自信を持って臨んでいただきたいです。このメンバーで、この衣裳で、この演目で踊る機会は一生に一度。二度と訪れることがないその瞬間を心ゆくまで楽しみ、舞台上で幸せを感じてほしいです!」(浅川)
取材・文:味澤彩子(ライター)Text by Ayako Ajisawa
