Kバレエ タイムズ K-BALLET TIMES

パフォーマンス・レポート「みんなで“踊りを楽しむ”―― 一人ひとりの成長が輝く、感動のステージ」

2025.05.09
イベントレポート

「K-BALLET ACADEMY/K-BALLET SCHOOL PERFORMANCE TOUR 2025 in Saitama」
〈2025年 4月 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール〉
©エー・アイ Photographs: Naoto Iijima, Takashi Hiyama, Mitsuhiko Yamazaki

美しい姿勢、しなやかな動き、そして豊かな感性――「K-BALLET ACADEMY/K-BALLET SCHOOL PERFORMANCE TOUR 2025 in Saitama」が彩の国さいたま芸術劇場で開催され、生徒たちによる日頃の成果が披露されました。Kバレエ スクールは、現在、首都圏に6校を開校。教師陣の多くは、Kバレエ トウキョウの現役もしくはかつて在籍していたダンサーやバレエ・スタッフで、Kumakawa メソッドを取り入れたバレエ教師認定資格コース「ティーチャーズ・トレーニング・コース (T.T.C.)」を修了しています。加えて、ピアニストによる生演奏でのレッスンや、身体への負担が少ないスタジオ設備など、バレエ教育に最適な環境のもと、3歳から趣味の大人まで幅広い層がバレエに励んでおり、年に一度の成果発表の場となる本パフォーマンスには4歳から21歳の生徒が参加。「みんなで踊りを楽しむこと」をテーマに、まず、恵比寿校、吉祥寺校、横浜校、大宮校と、プロのダンサーを育成するKバレエ アカデミー/プレ・プロフェッショナルコースが、日替わりで本番に臨みました。


 各校のプログラムは、「クラス作品」「コンテンポラリー作品」「クラシック作品」から構成されていますが、なかでも、レオタードを着用して踊られるクラス作品は、これまで一人ひとりと丁寧に向き合ってきた担任が振付を手掛けており、まさに信頼関係で結ばれた教師と生徒が一丸となって取り組んだ結晶です。一方、カンパニーの衣裳や舞台美術を使用したクラシック作品は、古典バレエの名シーンを抜粋上演することで、壮麗なグランド・バレエの醍醐味を味わい、プロフェッショナルな舞台の雰囲気を間近に感じられる絶好の機会。各々のモチベーションもいっそう高まったことでしょう。
 さらに最終日には、全校中学生以上の生徒が出演した合同パフォーマンスも行われました。わずか数日間の中で、二度にわたりお客様の前で踊ること、何より、普段は別々の所属校で学んでいる仲間と作品を作り上げるという経験は、唯一無二の財産です。主宰の熊川哲也、校長の蔵健太をはじめ、各校の教師も見守るなか、ベルボーイが開演を告げました。

©エー・アイ Photographs: Naoto Iijima, Takashi Hiyama, Mitsuhiko Yamazaki


 第1部の幕開けは、吉祥寺校による『ライモンダ』。民族舞踊風のステップも随所に織り込まれている格調高い大作を、動きの緩急を利かせながら堂々と踊り切っていた姿が印象に残ります。続く大宮校の『ドン・キホーテ』では、各人が高難度のテクニックに挑むとともに、フィナーレへと向かうにつれ、舞台上にはさらなるエネルギーが満ちあふれていました。第2部の冒頭、恵比寿校による『ラ・バヤデール』では、主役・ソリスト・アンサンブルと、それぞれが役どころを的確に理解することで完成度を高め、横浜校の『コッペリア』においても、等身大の自然な表現が、祝祭的な空間を広げていきました。また、各部のトリを飾ったのはKバレエ アカデミー/プレ・プロフェッショナルコースの精鋭たち。コンテンポラリー作品と、古典の最高峰とも呼ばれる『眠れる森の美女』を踊り、無限の可能性を感じさせました。


 そして、この日の最終演目を控え、蔵校長が登壇。「世界中でバレエ教育の研究が進むなか、私が特に注目しているのは、バレエを踊ることで、右脳と左脳、つまり感性と論理性を同時に発達させることができるという点。記憶力、コーディネーション能力、空間認識能力等、多くの能力が自然に育まれるといわれています。また、Kバレエ スクールでは、挨拶をはじめとする礼儀やマナーに始まり、忍耐力・完遂力・協調性といった“心の力”も大切にしており、生徒が困難に直面した時も、明るく前向きに取り組めるよう工夫を重ねるなど、自立性を引き出す環境づくりを心掛けています。私たちは、情熱あふれる教師陣と共に、子供たちの成長を一緒に見守るスクールでありたい」


 そんな思いが語られた後には、昨年のスクールパフォーマンスを映像で振り返るひとときが用意され、いよいよ初の試みとなる校長振付の『グラン・デフィレ』へと続きます。ピアノ連弾の力強い演奏が響き渡るなか、総勢100名の若きダンサーが一同に会し、密度の高い振付を一丸となって披露。次々と展開されるムーヴメントは圧巻で、客席からは惜しみない拍手が送られました。


 やがて、熱気に包まれたステージは、もう一つの大切な時間へと移ってゆきます。今回のパフォーマンスをもってスクールを卒業する生徒の修了セレモニーが執り行われ、会場はいっそう温かな雰囲気に。学業と両立しながらレッスンを積み重ねてきた先輩の姿、その熱意や努力が称えられる光景に、下級生からも憧れの眼差しが注がれ、最後のレヴェランスの際にこぼれた皆の笑顔は、我々観客の胸にも深く刻まれました。

©エー・アイ Photographs: Naoto Iijima, Takashi Hiyama, Mitsuhiko Yamazaki


 バレエを通して心身を養うことで育まれる自信は、子供たちの内側から輝きを引き出し、人生を豊かに彩る糧となります。そして、この舞台を通して目の当たりにした一人ひとりのひたむきな姿は、見る者の心にも深い感動を届けてくれました。


 “正しく”“楽しく”――Kバレエ スクールでは、それぞれの夢や目標に向かって歩む物語が、今日も生き生きと紡がれているのです。

取材・文:宮本珠希(舞踊評論家・編集者) 
Text by Tamaki Miyamoto