【芸術監督】熊川哲也
【演出・再振付】熊川哲也
【原振付】マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【舞台美術・衣装】ヨランダ・ソナベント/レズリー・トラヴァーズ
【照明】足立 恒

ジークフリード王子の誕生日。成人を迎えた彼は、母である王妃から翌日の舞踏会で花嫁を選ぶよう命じられる。その夜、湖のほとりで王子はオデットに出会い、あまりの美しさにひと目で恋に落ちる。王子の誠実さに心を許したオデットは、悪魔ロットバルトの呪いによって白鳥にされ、夜の間だけ人間の姿に戻れるという悲しい身の上を語る。彼女を救うために永遠の愛を誓う王子。だが、舞踏会当日、ロットバルトの策略によって王子はオデットによく似たオディールに愛を誓ってしまうのだった……。
古典作品の真髄にあくまで忠実に、それでいて、現代に生きる我々にとっても大いに魅力あふれる舞台を創造することで知られる演出家・振付家、熊川哲也。その『白鳥の湖』も、さまざまな解釈での上演を重ねてきた古典の名作を研究し尽くした舞台として、2003年の初演から高い評価を得ている。
音楽本来のテンポとストーリー性を生かし、物語および登場人物の感情が一貫して流れるドラマへと構築。オデットが白鳥へと姿を変えられるプロローグから、観客は作品世界に一気に引き込まれる。従来、作品の筋とは関連薄く展開されてきた場面も、物語のうちに巧みに織り込みつつ、スペクタクル性をさらに高めた振付を施し、見応えいっぱいに盛り上げる。細部に至るまで工夫の凝らされた演出が、無駄なく矛盾なく、物語を確かに伝えてゆく。オデットとオディール、二人の間で愛に迷う王子ジークフリードが迎えるクライマックスも迫力十分。世界的アーティスト、ヨランダ・ソナベンドとレズリー・トラヴァースの手による舞台美術と衣裳も眼福の極み。ミステリアスな魅力漂う重厚な美が、熊川演出の作品世界をさらに引き立てる。
今回の上演では、熊川自身が全幕物に待望の復帰を遂げるほか、多彩な個性に輝く実力派&期待の若手が主役として登場、カンパニーとしての充実度を大いにうかがわせる。上演のたびに円熟味と新たな魅力とを増してきたKバレエ版『白鳥の湖』。この春、見逃せない舞台だ。
(舞台評論家:藤本真由)
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